去年の夏、偉大なる緊縛師:明智伝鬼先生がお亡くなりになり、1年たちました。明智先生がお亡くなりになった今年の同日、明智先生のサングラスが出てきました。偶然とは思えないこのタイミングに、心より手を合わせずにいらせませんでした。
何年か前、偶然、明智先生とオランダでお会いし、ご一緒させていただいたことがあります。その頃、私はベルギーに住んでいました。イベントシーズンで、フェティッシュ&SMのイベント盛り沢山のオランダに遊びに行きました。アムステルダムに向かう途中に電車を降りて、オランダのある街の、よくお世話になっていたSMクラブに立ち寄りました。そちらのマダムが「リエ、今日は日本人が来ているのよ!」と教えて下さいました。ラッキーにも明智先生がそちらでショーをなさるとのことでした。
明智先生が帰国、それからかなり経ってから私は再びそのクラブに行きました。日本に行くことがあったら渡してもらえないかと、明智先生の忘れ物をマダムから預かりました。いつもショーの時に明智先生の優しい目を覆っているサングラスでした。
「サングラス預かってますよぉ~」「もらっちゃいます」「あ、また忘れちゃった!」と言いながら、何故かお返しするタイミングを外してばかりのサングラス。結局、長い月日が過ぎ、私の手元に残したまま、明智先生はお亡くなりになりました。
そのサングラスを持っていることすら忘れていた先月、片付けものをしていたら「Mr.Akechi」と書かれた封筒が。「あっ!!」手にしてびっくり、数秒後に二度びっくり。「去年の今日、明智先生がお亡くなりになった日だ!」その封筒を胸に抱かずにはいられませんでした。
明智先生と私には共通点が何もありません。多くのドミナは何かを極める…と言うと緊縛にしますが、私は緊縛は二の次。いや、正直言って拘束できれば何でもいい。プロとして最低出来なきゃいけない分にはやるけれど、自分の本当の興味は鞭と革。極めるなら、脇目ふらずに鞭!!革文化でない日本だけじゃダメと、ヨーロッパに目を向けた私。
反対に、明智先生の緊縛は日本のもの。じっくり腰を据えて、刑罰史の資料に目を向けるお姿は(→想像:笑)まるで現代の侍、明智先生のイメージそのものです。まさに日本の代表、世界に出るべき選ばれた人、世界に通用する日本の文化です!(明智先生の緊縛ショーを見たオランダの観客の表情と反応、今でも忘れることができないくらいの興奮でした。)
まさに静と動、繊細と大胆。言うまでもなく、明智先生も私も責め手、プレイすることも出来ない。緊縛を自分でやろう、極めようと思わない私は、明智先生の緊縛は「未知の世界の芸術」。真似しよう、ああなりたい、とも思わない偉大なもので、別世界の芸術ですよ。SMプレイに取り入れようとかじゃなくて、シーレの如くそこに佇むものを眺めていたいもの、芸術。
これだけ接点がないのに、何故か私は明智先生が大好きで、かなり強情な性格の私が、明智先生には何でも話していたような気がする。あんなに優しくて、不思議で、魔法つかいみたいな緊縛師と、人と、ふれ合う時間があったことに感謝したい。
お盆ですね、手を合わせましょう。
「明智先生、あっちでもM女みつけて楽しくやって下さい!」