2007年11月10日土曜日

調教するということ

犬の調教について書いたら、読者のM男性が以下の文章をまとめて下さいまた!!
S女さんにとっては最高の教科書となること間違いなし!
是非読んでみてね。

★★★
よく訓練された犬、たとえば盲導犬とか警察犬とかでなくとも、家庭犬としてよく訓練された犬を、その飼い主さんからちょっと借りて、「スワレ!」、「マテ!」、「フセ!」とかコマンドを出すと、犬は瞬時に小気味よく命令に従い、その姿勢を取ります。「持って来い!」と言って力一杯ボールを投げると嬉々として駆けだし 、どんなに遠くに飛んだボールさえ探しだし拾って駆けて戻ってくる。あなたの足下にボールを置いて、また「投げてくれ」っておねだりしたり。レストランで食事をする。もちろん人間の食卓に参加することは許されません。「フセ」の一言で訓練された犬は足下で伏せてじっと待ちます。
気持ちいいでしょうねぇ・・・。

そんなふうに犬を訓練するのは容易じゃない。たいへんな時間と手間をかけて、根気よく育てなければ、そうはならない。褒めたり叱ったり、こちらの要求や期待を犬が理解できるまで、そして同じことを何度も何度も繰り返し、教え育てなければなりません。
この訓練を、以前は「調教」と呼びました。訓練を施す職業は「調教師」。語感が嫌われたためか調教という言葉は使われなくなり、「訓練」、「訓練師」、「トレーナー」とどんどんソフトに変わってきましたが、やってることは変わりません。
ま、叱る時間と褒める時間の割合が少し変わってきているということはあるみたいだけど。

犬の訓練を経験したことがある人はご存知と思うけれど、犬に教える場合、当たり前だけど叱るだけでも褒めるだけでもダメで、それぞれの犬の性格を把握した上で、人間の言葉や感情をそのまま理解できない犬に、理解できる「ことば」や「身振り」を探し出して伝える必要があります。実に根気のいる作業です。

プロの訓練士が犬を訓練する様子を見たことが何度かあります。ご近所では評判の名犬、レッスンの内容は「スワレ」、「フセ」、「マテ」、「ツケ」、「持ってこい」etc.・・・いたって地味なもの。
その犬を借りて、訓練士と同じようにコマンドを出してみる。犬は喜んであなたのコマンドに応えてくれるでしょう。まるで自分が訓練士になった気分。
端から見ていれば同じように見えるこの様子、ところが犬にとってはぜんぜん違う意味だったりします。訓練士のコマンドはまさに訓練(調教)、あなたのコマンドは遊び(プレイ)。試みに、未だ十分な訓練のいきとどいていない犬をあずかって、同じコマンドを発してみればわかります。あなたのコマンドには従わず、犬は自分 のしたいこと、興味のあることだけ求めて、うろうろしたり、臭いをかいだり、あなたに飛びついて甘えたり。強引に叱ってコマンドを押しつけると、逃げるか、あるいは怒って跳びかかってくるかも知れません。そんな犬でもプロの訓練士にかかれば、ものの数分で忠実にコマンドに反応する良い子になってしまう。ここに「遊び 」と「訓練」の差を知ることが出来るでしょう。

公園や広場でボール投げやフリスビー、駆けっこをしている犬と飼い主の姿を羨んで、自分も犬を飼う。ところが犬はぜんぜんそんなふうに遊んでくれない。広場で駆け出せば戻ってこない。ボールを投げても、追っかけはするものの、咥えてかじってしまって返してくれない。
そこでプロの訓練士に相談し、訓練士に犬をあずけます。一定の訓練を終えた犬を返され、再び広場へ・・・。しかし犬の振る舞いは大して変わらない。あなたは訓練士に文句を言う。
「おかしいですねえ、全部ちゃんとできる子になってますが・・・。」訓練士はあなたのところに来て犬を見る。コマンドを発して、それに正しく反応することを確認し、そしてあなたにこう言うでしょう、「あなたは犬に尊敬されていませんね」。

そこから犬に対する接し方をあなたは考え始めることになります。「遊び」と「訓練」の違い、褒め方、叱り方、そして愛し方・・・。
長い試行錯誤と努力を重ねて、やがてあなたはそれを理解するでしょう。もう訓練士の助けはいりません。あなた自身が犬に教えることができる。新しいコマンドや新しい課題を与えそれを達成させる歓びを犬とともに味わうこととなります。そして納得するでしょう、犬と遊ぶ楽しみとは、予め訓練された犬を与えられるのではな く、自ら訓練を施すことにあったのだと。

こうして、あなたは初めて、犬の同居人、食事や散歩の世話係だった存在から、本当の飼い主になるのです。